水上バイク
水は相当な高さまで来ていた。
2階の屋根だけ出ているということは4mくらいだろうか。
「母親の車をおいた場所も危ないかもしれない」
まず大丈夫であろう場所に置いておいたが、心配になって車の所まで行き、今いる場所まで移動させた。
走って車を取りに行く途中、町を覆った茶色い水の上を、水上バイクで走り回っている人がいた。
「こんな時に何やってんだ。ふざけた奴がいるもんだ」
と思った。
テンションが上ってふざけていると思ったのだった。
ところが実際はふざけていたのは自分の方で、この人は水上バイクで被災者を助けて回っていたのだった。
自分はこの時、まだ状況が理解できていなかったのだ。
まさか個人が水上バイクやボートで人を助けて回っているとは・・・。
このことは後からいろんなメディアでとり上げられて
「そうだったのか・・・」
とショックを受けた。
遊んでると思ってしまって申し訳ない。
母の車を移動させた後、雨はどんどん激しさを増していて、次にまた更に災害が起きるのではないかと不安が募った。
「山の中腹」的な場所に車を停めていたので、ここまで水が来るとは思わないが、その山が大雨で崩れるのではないか・・・という不安があった。
後ろの山がもし崩れたらこの位置だと間違いなく生き埋めになる。
移動するか・・・??
しかし下手に動くのもどうなのか・・・。
どこに行けばいいのか?
どこなら安全なのか?
結局動けないまま、その場所に留まっていた。