異変
自分はSNSはやらないので緊急メールとテレビの速報に集中していた。
テレビでは30分毎に放送があり、その間は字幕による速報が入るくらい。
そんな状況の中、
「高馬川の氾濫はくい止められました」
という情報を得る。
たしかテレビの字幕だったと思うのだけど、記憶があやふや。
しかし、その情報を目にしたのは確かで、母と、
「いや~良かった!助かった!もう大丈夫じゃ!」
と言い合った。
気付けば消防のサイレンも鳴らなくなっており、雨の音以外は少し喧騒が収まっていた。
水があと2~30センチで道路を超えてこなかったのは、土のうを積んだりなど消防が頑張ってくれていたのだ、と思った。
なにしろ自分のイメージとしては、小田川の支流が溢れて、ザーザーと土手の下に流れ出している状態なのだから、土手を土のうで食い止めれば収まる、という感じだった。
(現実的には土手は何箇所も決壊してとんでもない状況だったのだが)
これから水位を注視しながら、雨が止んでくれば事態は収束へ向かうだろう。
安心したらお腹が空いた。
もう3時半。夜から何も食べずに行ったり来たりしているのだから。
母に、「安心したら腹減った。カップ麺でも食うわ。食べてもう寝よう」
と言って、カップラーメンを食べた。
食べ終わって、
「まあ、一応見てくるわ」
と言い、家を出て田んぼの方に向かった。
辺りがさらに暗くなったのか、道路との境がよく見えない。
全部真っ黒に見える。
近づいていくとそれは全部水だった。
あと2~30センチで何時間も耐えていた水位が、道路を超えて2メートルほどこっちへ来ていた。
これはおかしい!
ラーメン食べてる10分20分の間にこんなとてつもない水量がやってくるのは支流の氾濫とかいう話じゃない。
絶対何かあった。
そう思って、すぐ家に戻りかけたら、弟も水を見にこっちに歩いてきた。
私「やべえ!超えてきた!逃げよう!」
弟「逃げよう!」
私「どうする?2階へ上がるか!?」
弟「・・・・・・取り残されるかもしれん。高台へ逃げよう!とりあえず車を全部高い場所に上げよう!」
そう言い合ってそれぞれの家へ。
家に帰って母に
「水が来た!様子がおかしい!逃げるよ!」
もう大丈夫と安心してた母の表情が一気に曇った。
「逃げる・・ってどうすればいいん?何を持って行けば・・・」
もう泣きそうな顔をしている。
それはそうだろう。
怖くて不安で仕方ないはずだ。
「とりあえずお金に関するものだけ用意しといて!」
と言って、車を高台に上げるために外へ出た。
・・・書いていて吐き気がする。
精神的なダメージがやはりあるのかな・・・。