水平避難
まず母の車を数百メートル離れた場所にある、うちのお墓のある山の麓へ。
それから走って家まで帰っていると、近所の人も次々に車を移動させていた。
普段ほとんど話しをしない、ちょっと変わり者の近所のおじさんとすれ違った。
「車を逃がす。その後、車椅子の婆さんがまだ中におるから連れて出る!」
という。
この家の玄関先にはすでに水が流れ込んで来ていて、大丈夫か?思ったが
「急いでね!」
と声をかけて急いで自宅に戻った。
中に入ると、母が
「2階に上がったんじゃおえんの?一応布団を敷いといたんじゃけど」
という。
正直僕も2階に逃げとけば大丈夫じゃないのか?という思いがあった。
2階でも大丈夫かもしれない。
でももしかしたら大丈夫じゃないかもしれない。
わからない以上は最大限の対策をとった方が良いと思い、
「いや、車に乗って高台へ行こう」
と母を連れ出した。
あとは自分の車で2人逃げるだけ。
外に出て自分の車に乗ろうとしたら、最初に見たときより水際が数メートル家の方に来ていた。
何時間も停滞していたのに、ここへ来て結構なスピードで増えている。
母は、家の入口の門にブルーシートを敷いている。
少々の浸水なら食い止められるように、だ。
こんな時でも頭が回る人だ。
僕はそんなこと思いもつかなかった・・。
ブルーシートを一応簡単に敷いて駐車場に行くと軽トラが1台停まって誰か乗っている。
誰だ・・・?